組織開発に活かす「拡張・形成理論」:なぜ、職場の『いい気分』が必要なのか?
会社などの組織で「離職」はつきものです。辞めるときの理由は様々です。
しかし辞めるときの理由で本音は言いません。「給料」「待遇」「人間関係」「体調」など表向きの理由は様々ですが、「本当の理由」は「そこにいるのが嫌だから辞める」というふわっとした理由で辞めていく人も多いと思います。
「嫌だから辞める」と言われても対策は難しいですよね。しかし、いい気分で働ける組織なら「嫌だから辞める」という理由の退職は減らせるのではないでしょうか。「拡張・形成理論」を応用した「いい気分で働ける組織」の作り方をお伝えします。
1. 人はピンチのとき、視野が「狭く」なる
想像してみてください。サバンナでライオン(猛獣)に出会ったら、人間はどうするでしょうか? 「戦うか、逃げるか」しか考えられなくなりますよね。明日の天気の心配や、新しいアイデアのことなんて考えている余裕はありません。
これは、人間の脳に備わった「ネガティブな感情(不安・恐怖・プレッシャー)は、生き残るために視野をグッと狭めて、1つの行動に集中させる」という仕組みです。
職場の人間関係がギスギスしていたり、失敗が許されない過度なプレッシャーを感じたりしているとき、メンバーの脳内はこれと同じ「猛獣に出会った状態」になっています。 視野が狭まり、「怒られないようにしよう」「失敗しないようにしよう」という守りの行動しか選べなくなってしまうのです。
2. 「いい気分」が、人の視野と可能性を「広げる」
では、逆に心が安全で、喜びや感謝、ワクワクといった「ポジティブな感情」を感じているときはどうでしょうか?
心理学の研究(拡張・形成理論)では、人がいい気分でいるとき、脳の視野や思考の選択肢が「グッと広がる(拡張する)」ことが分かっています。
- 「いつもと違う方法を試してみようかな」という柔軟なアイデアが生まれる
- 「隣の部署のあの人に相談してみよう」というオープンなつながりが生まれる
つまり、職場のポジティブな感情は、単なる「仲良しクラブ」のためのものではなく、メンバーの創造性やチャレンジ精神を引き出すための「スイッチ」なのです。
3. 広がった行動が、会社の「一生モノの財産」になる
ここからがこの理論の最も重要なポイントです。
ポジティブな感情そのものは、その場限りの一時的なものです。しかし、視野が広がったことで生まれた「挑戦」や「対話」は、感情が去った後も、会社と個人の中に「目に見えない財産(資源)」として蓄積(形成)されていきます。
- 知的な財産: 新しい業務スキル、トラブル解決のノウハウ
- 社会的な財産: 部署を超えた強いチームワーク、困ったときに助け合える信頼関係
- 心の財産: 「このチームなら乗り越えられる」というしなやかな強さ(回復力)
4. まとめ:私たちが目指す組織のサイクル
これまでの組織開発は、「不満や問題(ネガティブ)を潰す」ことに必死になりがちでした。 しかし、これからは「ポジティブな感情を種まきし、財産を育てる」アプローチに変えていきます。
【職場での上向きのらせん】 日常の中に「感謝や安心(いい気分)」が増える ↓ メンバーの視野が広がり、自発的なアイデアや対話が生まれる 【拡張】 ↓ チームの絆や個人のスキル、離れたくない居場所が育つ 【形成】 ↓ 結果として、**「ここでずっと働きたい」「この仲間と成長したい」**状態が作られ、退職が自然と防がれる。
私たちは、メンバーが「プレッシャーで縮こまる組織」ではなく、「いい気分でポテンシャルを最大限に広げ、一生モノの財産を築ける組織」を一緒に作っていきます。
